SaaS企業でのインサイドセールスの役割とは?効果を出すためのポイント

SaaS企業の担当者様は、以下のような切実な課題に直面していませんか?
- リードタイムが長すぎて、フィールドセールスだけでは効率が悪い
- 顧客生涯価値(LTV)最大化のために顧客育成(ナーチャリング)が必須だが、リソースが足りない
- 営業の分業制(THE MODEL)を取り入れたいが、専門人材の採用ができない
SaaS市場の競争が激化する現代において、効率的な顧客獲得とビジネス拡大を図るため、インサイドセールス導入の重要性はもはや疑いようがありません。
しかし、その導入・運用には高度なノウハウと専門的な組織体制が求められます。「インサイドセールスを導入したいが、何から手をつけていいか分からない」「自社で成功できるか不安だ」と悩んでいる担当者の方も多いでしょう。
本記事では、SaaSビジネスの仕組みを踏まえてインサイドセールスが最重要視されるロジックを徹底的に解説します。さらに、多くの企業がつまずく「内製化の壁」を明確にし、その解決策を具体的にご紹介します。
インサイドセールスを導入したいご担当者様へ
専門ノウハウと即戦力チームを、内製化の壁に阻まれることなく確保しませんか?
株式会社ネオキャリアのインサイドセールス代行サービスは、貴社のSaaSビジネスのフェーズに合わせた最適な戦略を提案し、内製化への移行支援も可能です。まずはお気軽にご相談ください。
目次[非表示]
- 1.SaaS企業でインサイドセールスが重要視される理由
- 1.1.SaaSとは
- 1.2.SaaSの構造的課題を解決するインサイドセールス
- 2.SaaS特有の役割:リードナーチャリングとTHE MODEL
- 3.インサイドセールスの核となるリードナーチャリング
- 4.インサイドセールスがSaaS企業の課題を解決する5つの理由
- 4.1.①成約率向上と早期解約率の低減に貢献
- 4.2.②高単価・長期契約案件の受注を安定化させる
- 4.3.③限られたリソースで全国に効率的にリーチ可能
- 4.4.④活動範囲の限界を突破し、商談数を最大化する
- 4.5.⑤THE MODELに基づく分業制で生産性の大幅向上
- 5.成功を阻む「内製化の壁」:導入・運用で失敗する3大リスク
- 6.インサイドセールス導入前に最低限準備しておくべきこと
- 7.内製化の壁を乗り越えるための「2つの選択肢」
- 7.1.時間をかけて内製化に挑む
- 7.2.インサイドセールス代行を活用する
- 8.代行サービス選定の3つのチェックポイント
- 8.1.①SaaSビジネスへの理解度と実績
- 8.2.②ツール運用・データ活用のスキル
- 8.3.③組織連携を担えるか
- 9.まとめ
SaaS企業でインサイドセールスが重要視される理由
SaaSとは
まず、インサイドセールスがSaaS(Software as a Service)と相性が良い理由を理解するために、SaaSというビジネスモデルの特性を再確認しましょう。
SaaSとは、インターネットを介して提供されるクラウドベースのソフトウェアサービスの総称で、代表的な例としてはChatwork、Zoom、kintoneなどが挙げられます。
SaaS企業は、サービスを買い切りではなく、月額または年額で定額料金を支払うサブスクリプションモデルを採用していることが多く、このモデルのビジネスを成功させるためには、以下の2点が不可欠です。
|
インサイドセールスのメリットとデメリットについて詳しく知りたい方は、下記記事もご参照ください。
SaaSの構造的課題を解決するインサイドセールス
従来の訪問型営業(フィールドセールス)では、一度の提案で契約に結びつけることに重きが置かれていましたが、SaaSビジネスにおいて、この手法は以下のような構造的な課題に直面します。
SaaSビジネスの構造的課題 | インサイドセールスによる解決策 |
|---|---|
リードタイムの長期化 | BtoB商材は検討期間が長いため、リードナーチャリング(顧客育成)を効率的に実施し、顧客との関係性を継続的に構築する。 |
営業エリアの物理的な限界 | 非対面(電話・Web会議)で営業活動を行うため、全国の企業に対し、移動時間やコストをかけずにアプローチが可能。 |
LTV最大化の必要性 | 顧客のニーズを深くヒアリングし、単なる契約ではなく「課題解決」としての導入を促すことで、納得感を高め、早期解約率の低減に繋がる。 |
インサイドセールスは、SaaS特有の「高効率な顧客育成」と「全国規模でのリーチ」を実現し、サブスクリプションモデルの成功に不可欠なLTV最大化と解約率低減の土台を築くため、最重要視されています。
SaaS特有の役割:リードナーチャリングとTHE MODEL
ここでは、インサイドセールスが単なるアポ取りではない、戦略的な組織活動の「要」である理由を解説します。
営業の分業制:「THE MODEL」がSaaSで必須な理由
SaaSビジネスにおいてインサイドセールスが重視される背景には、営業プロセスを部門ごとに分割し、効率と専門性を追求する「THE MODEL(ザ・モデル)」という考え方があります。

従来の営業が、担当者が1人でリード獲得からクロージングまですべてを担う「狩猟型」だったのに対し、THE MODELは各部門が専門的な役割に特化し、協力して成果を最大化する「農耕型」のモデルです。
なぜこの分業制がSaaSで必須なのか、以下の表にまとめました。
部門 | 役割 | SaaSにおける意義 |
|---|---|---|
マーケティング | 潜在顧客の獲得と認知度向上 | LTV最大化のため、幅広い見込み客(リード)を継続的に生み出す土台作り。 |
インサイドセールス | リードの育成(ナーチャリング)と商談創出 | 長期の検討期間に対応し、質の高い商談をフィールドセールスへ供給する。 |
フィールドセールス | 商談から契約(クロージング) | 確度の高い案件に集中し、成約率を最大化する。 |
カスタマーサクセス | 契約後の活用支援と継続利用促進 | 早期解約を防ぎ、LTVの最大化に貢献する。 |
インサイドセールスは、マーケティングが獲得したリードを「質の高い商談」へと育て上げ、フィールドセールスへ引き渡すという、バトンパスの「要」を担います。この連携が滞ると、営業活動全体が非効率に陥ってしまうため、インサイドセールスの戦略的な役割は極めて重要となるのです。
インサイドセールスが担う「2つのアプローチ」
インサイドセールスは、リードの獲得経路によって、さらに以下の2つの専門的なアプローチ、SDR(Sales Development Representative)とBDR(Business Development Representative)に分かれます。

アプローチ | 役割 | 目的 |
|---|---|---|
SDR | インバウンド対応 | 資料請求やウェビナー参加など、顧客側からのアクションで生まれたリードに対し、迅速にアプローチし、商談確度を高める。 |
BDR | アウトバウンド対応 | 戦略的にターゲティングした大企業や重要顧客に対し、能動的・戦略的にアプローチし、新規の商談機会を創出する。 |
特にBDRは、市場にまだ顕在化していない課題を持つ企業へアプローチするため、高い業界理解と戦略的思考が求められる「狩猟型」の側面も持ちます。インサイドセールス部門がこの2つの役割を明確に分けることで、より効率的に多様なリードに対応できるようになるでしょう。
インサイドセールスの核となるリードナーチャリング
インサイドセールスの核となるのがリードナーチャリング(見込み客の育成)です。
SaaS商材は高額であるほど、顧客は導入に際して複数の部署で慎重に検討を重ねるため、リードタイム(検討期間)が長くなる傾向があります。インサイドセールスは、この長い検討期間中に顧客の関心が途切れないよう、継続的なコミュニケーションを行います。
|
このように、顧客の購買フェーズをデータに基づいて見極め、適切なタイミングで「刺さる」情報を提供し続けることで、顧客の「このサービスで課題が解決できる」という確信を高めていきます。
インサイドセールスによって質の高いナーチャリングができるかどうかが、フィールドセールスがクロージングできるかどうか、ひいては顧客が長期利用してくれるかどうかを左右すると言っても過言ではありません。
インサイドセールスがSaaS企業の課題を解決する5つの理由
SaaSビジネスが抱える構造的な課題に対し、インサイドセールス導入がいかに効果的な解決策となるか、具体的な理由を5つ解説します。
①成約率向上と早期解約率の低減に貢献
営業成績を伸ばしたい企業にとって、インサイドセールスの導入は最も効果的な戦略です。
インサイドセールスは、見込み客に対して継続的なリードナーチャリングを行い、顧客が製品について納得感を持った段階で商談化します。これにより、フィールドセールスへ引き継がれる案件は質の高いものに厳選されていくのです。
結果として、商談後の成約率が向上するだけでなく、顧客が自社の課題解決のために納得して導入するため、LTVを損なう早期解約率の減少にもつながります。
②高単価・長期契約案件の受注を安定化させる
インサイドセールスは、特に商材の売上が大きい(高単価または長期契約の可能性がある)SaaS商材と相性が良いです。
高単価・長期契約案件では、導入決定までに決裁者、現場部門、IT部門など、複数の関係者が関わるため、検討期間が長期化する傾向があります。インサイドセールスは、非対面で複数の関係者と同時並行でコミュニケーションを取り、複雑な購買プロセス全体でのサポートが可能です。
リードのニーズを深く把握した上で提案するため、単なる一時的な契約ではなく、長期的なパートナーシップに繋がる案件を安定的に創出できるようになります。
③限られたリソースで全国に効率的にリーチ可能
営業の人材不足に悩むSaaS企業にとって、インサイドセールスは限られたリソースを最大限に活用できる方法のひとつです。
SaaS企業は開発にリソースを集中させる傾向があり、営業人員が不足している企業も多いでしょう。インサイドセールスは移動を伴わないため、物理的な制約を受けず、東京から北海道・沖縄まで全国の企業に同時にアプローチできます。また営業スタッフが不足していても、インサイドセールスを導入することで、新規顧客獲得の機会を逃さず、効率的に市場全体をカバーすることが可能です。
④活動範囲の限界を突破し、商談数を最大化する
「フィールドセールスに限界を感じている」企業は、インサイドセールスによってその壁を突破できます。
フィールドセールスが訪問可能な地域や対応できる商談数には物理的な限界があります。インサイドセールスを導入し、リード育成と商談創出を専門部門に切り分けることで、フィールドセールスはクロージング活動に専念できるようになります。
これによって、フィールドセールスのパフォーマンスが向上するとともに、インサイドセールスが非対面で獲得した全国の案件をパイプラインに加えられるため、企業全体の商談数と売上のポテンシャルが最大化されます。
⑤THE MODELに基づく分業制で生産性の大幅向上
「営業プロセスを効率化したい」企業にとって、インサイドセールスの分業制は生産性向上の特効薬となります。
インサイドセールスの導入は、リード獲得から契約までを明確に分担する「THE MODEL」の実現を意味し、各担当者が専門のプロセスに集中することで、ノウハウが蓄積され、営業活動のスピードと質の向上につながります。
営業担当者も、アポイントメントの設定から解放され、専門性の高い提案活動に集中できるため、業務負担の軽減や離職率の低減にも繋がり、組織全体の効率化が実現できるでしょう。
成功を阻む「内製化の壁」:導入・運用で失敗する3大リスク
SaaS企業がインサイドセールスを導入する際、自社でゼロから立ち上げようとすることで直面しがちな、決定的な3つの障壁を解説します。
専門人材の採用難と育成コスト
インサイドセールスは、電話やWeb会議を用いた非対面コミュニケーション能力に加え、SaaS特有のビジネスモデルやITツールを使いこなす高度なスキルが求められます。
採用競争率の高さ
SDRやBDRとして「THE MODEL」を正しく運用できる人材は市場に少なく、採用競争が激化し、獲得が困難を極めます。
先行投資(固定費)の増大
採用コスト、人件費、教育コストが成果が出る前に固定費として先行して発生し、キャッシュフローに大きな負担をかける可能性があります。
ノウハウ不足による「テレアポ化」とデータ活用不全
内製化の失敗例として最も多いのが、インサイドセールスが本来の役割を果たせず、「単なるアポイント獲得のためのテレアポ部隊」になってしまうことです。
戦略不在のテレアポ化
ノウハウ不足により、「架電件数」や「アポ数」といった量的な指標ばかりを追い、本来の役割である顧客育成(ナーチャリング)が疎かになり、商談の「質」が低下します。
SFA/CRMのツール難民化
SFAやCRMを導入しても、データ入力・分析に関するノウハウがないため、データが活用されない「データ不全」に陥ってしまいます。
部門間連携の壁と組織文化の衝突
インサイドセールス成功の鍵は、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス間での緻密な連携(SLA)です。この連携構築が、内製化において最も難しい壁となります。
SLAの不在
「どのような質のリードを」「いつまでに」引き渡すかというルール(SLA)がないと、マーケティング・インサイトセール・フィールドセールス間で責任の押し付け合いが発生し、組織の士気が低下します。
情報連携の断絶
インサイドセールスが収集した顧客の背景情報がフィールドセールスやカスタマーサクセスに正確に引き継がれず、顧客体験が一貫性を欠き、早期解約の要因に繋がってしまいます。
インサイドセールス導入前に最低限準備しておくべきこと
インサイドセールスを本格的に立ち上げる前に、まず自社でできる初期準備に取り掛かりましょう。以下の要素を固めておくことで、内製・代行問わず、成功確率を大幅に高められます。
インサイドセールス導入の具体的な方法や成功事例を詳しく知りたい方は、下記記事を参照ください。
ペルソナとカスタマージャーニーの徹底的な設定
ペルソナの設定
BtoBのSaaSでは、企業の業種、規模、ITリテラシーに加え、購買担当者の役職や抱える具体的な課題まで深く掘り下げて設定します。
カスタマージャーニーの設計
顧客が製品を認知し、購入に至るまでの心理状態と行動を可視化し、各段階で最適なコミュニケーションの戦略を立てられるようにします。
コンテンツの充実化とデータ活用の基盤整備
コンテンツの整備
ペルソナとカスタマージャーニーに基づき、顧客の疑問を解消できるコンテンツ(お役立ち資料、導入事例、ウェビナーなど)を事前に準備し、インサイドセールスが顧客を育成するための「武器」とします。
データ活用の基盤整備
SFAやCRMの基本的な仕組みを整え、顧客情報や活動履歴を蓄積・共有できる環境を構築しておきます。
マーケティング・フィールドセールスとの連携ルールの概定
MQL/SQLの定義
マーケティングからインサイドセールスへ渡すリード(MQL)と、インサイトセールからフィールドセールスへ渡す商談(SQL)の「質」の基準を定義します。
連携フローの策定
「リードがホットになってから何時間以内にインサイトセールがアプローチするか」といったスピードに関するルールを概定しておきましょう。
内製化の壁を乗り越えるための「2つの選択肢」
第5章で紹介した準備を進めた後、「内製化の壁」が立ちはだかる企業も少なくありません。この課題をクリアするためには、大きく分けて以下の2つの選択肢があります。
時間をかけて内製化に挑む
自社の人材とリソースを投じ、組織をゼロから構築していく方法です。
メリット |
|
|---|---|
課題 |
|
向いている企業 |
|
インサイドセールス代行を活用する
外部のインサイドセールス代行サービスに、立ち上げから運用の一部、あるいは全部を依頼する方法です。
メリット |
|
|---|---|
課題 |
|
向いている企業 |
|
SaaS業界におすすめの営業代行会社について知りたい方は、下記記事もご参照ください。
代行サービス選定の3つのチェックポイント
代行サービスの活用を決めた場合、成果に直結するパートナーを選ぶことが重要です。以下の3つの点をチェックして、貴社に最適な代行会社を見極めましょう。
①SaaSビジネスへの理解度と実績
代行会社の過去の成功事例が、SaaS企業やサブスクリプションモデルに特化しているかどうかを確認しましょう。LTVの最大化や、THE MODELの構築・運用を支援した経験があるかをチェックします。
②ツール運用・データ活用のスキル
代行会社が、単に電話をかけるだけでなく、SFA(営業支援システム)/CRM(顧客管理システム)などのITツールを高度に運用できるかを確認する必要があります。
③組織連携を担えるか
代行会社が、インサイドセールスの業務だけでなく、貴社のマーケティング部門やフィールドセールス部門との部門間連携(SLA)に基づく連携ルール構築までを支援できるかが重要です。
まとめ
SaaS業界の競争が激化する中、インサイドセールスの導入は、効率的な顧客獲得とLTV最大化に不可欠であり、もはや「必須の経営戦略」と言えるでしょう。
本記事で解説したように、インサイドセールスは、THE MODELに基づく戦略的な顧客育成を通じて、事業課題を根本から解決します。まずはペルソナ設定やコンテンツ整備といった初期準備を進めましょう。
そして、「専門人材の採用難」や「ノウハウ不足」といった内製化の壁に直面した際は、プロの代行サービスという選択肢が、ビジネスを最短で成功へと導く鍵となります。







