経理業務アウトソーシング完全ガイド!費用相場、依頼できる業務、失敗しない選び方

経理業務アウトソーシング完全ガイド!費用相場、依頼できる業務、失敗しない選び方

専門知識と高い正確性が求められる経理業務は、慢性的な人手不足や法改正への対応、属人化といった多くの課題を抱えているのではないでしょうか。これらの課題を解決し、企業の生産性を向上させる手段として、経理業務のアウトソーシング(外部委託)が注目されています。

しかし、アウトソーシングを成功させるには、自社の「人手不足」「法改正対応」「属人化」といった切実な課題が本当に解決できるのかを見極め、適切な委託先を選ぶことが重要です。

この記事では、経理業務のアウトソーシングを成功させるために必要な基本知識から、具体的な費用相場、委託できる業務範囲、そして導入後に後悔しないための業者選定のポイントまで、プロの視点から徹底的に解説します。経理業務の効率化に取り組む経理担当者と、経営基盤の強化を目指す経営者様・経理担当者様は、ぜひ本ガイドをご活用ください。

目次[非表示]

  1. 1.経理アウトソーシングが注目される3つの背景
    1. 1.1.深刻な人手不足と採用・育成コストの増大
    2. 1.2.法改正・制度変更への迅速な対応の必要性
    3. 1.3.業務の属人化・ブラックボックス化によるリスク
  2. 2.経理をアウトソーシングする5つのメリット
    1. 2.1.人件費・採用コストの削減と最適化
    2. 2.2.専門知識による業務品質向上とミスの防止
    3. 2.3.属人化解消と不正リスクの抑制
    4. 2.4.コア業務への集中(経営資源の最適化)
    5. 2.5.法改正(インボイス・電帳法)への迅速な対応
  3. 3.経理アウトソーシングで依頼できる業務範囲
    1. 3.1.日常業務(ルーティンワーク)
    2. 3.2.月次・年次業務(専門知識が必要な業務)
    3. 3.3.法律上外部に委託できない業務(最終決定権は社内)
  4. 4.導入前に知っておくべきデメリットと失敗しないための対策
    1. 4.1.社内にノウハウが蓄積されない
    2. 4.2.情報漏洩リスク
    3. 4.3.タイムリーな経営数字の把握が遅れるリスク
    4. 4.4.導入初期にマニュアル作成・引継ぎ工数が発生する
  5. 5.経理アウトソーシングの費用相場と料金体系
    1. 5.1.料金体系の種類(仕訳数、時間、月額定額など)
    2. 5.2.業務別・規模別の具体的な費用相場
  6. 6.経理をアウトソーシングする業者選定5つのポイント
    1. 6.1.業者の実績・専門性と自社業界への対応力
    2. 6.2.セキュリティ体制と秘密保持契約(NDA)の締結
    3. 6.3.納期管理と緊急時の対応体制
    4. 6.4.会計システム・ツールへの対応力
    5. 6.5.費用対効果と見積もりの明確さ
  7. 7.まとめ

経理アウトソーシングが注目される3つの背景

近年、企業の規模や業種を問わず、経理業務のアウトソーシングが急速に広まっています。これは企業が内部で解決しきれない、以下の3つの大きな課題に直面しているためです。

深刻な人手不足と採用・育成コストの増大

少子高齢化に伴う労働人口の減少は、経理部門も例外ではありません。専門知識を持つ経理人材の採用は難しく、採用できたとしても高い人件費や育成コストがかかります。

アウトソーシングは、この慢性的な人材不足の解消と、コストの固定費から変動費への転換を可能にする有効な手段として選ばれています。

法改正・制度変更への迅速な対応の必要性

電子帳簿保存法、インボイス制度、グローバルな会計基準の導入など、経理を取り巻く法制度は頻繁に改正されています。これらの変更に自社のリソースだけで対応し、コンプライアンスを維持するには大きな負荷がかかるでしょう。

アウトソーシングを利用することで、専門家の知識を即座に活用でき、法令遵守のリスクを大幅に軽減できます。

業務の属人化・ブラックボックス化によるリスク

経理業務は専門性が高いため、特定の担当者にしか業務内容がわからない「属人化」が起こりやすい部門です。これは、担当者の急な退職や長期休養時に業務が完全にストップするリスクに加え、業務プロセスの不透明さから不正やミスの温床となる危険性も持っています。

アウトソーシングし業務プロセスを可視化することで、それらのリスク低減が見込めるでしょう。

経理をアウトソーシングする5つのメリット

経理業務を外部委託することで企業が得られる具体的なメリットを、5つの視点から詳しく解説します。

  1. 人件費・採用コストの削減と最適化
  2. 専門知識による業務品質向上とミスの防止
  3. 属人化解消と不正リスクの抑制
  4. コア業務への集中(経営資源の最適化)
  5. 法改正(インボイス・電帳法)への迅速な対応

人件費・採用コストの削減と最適化

経理担当者の採用には多大なコスト(求人広告費、エージェント手数料)工数、そして毎月の固定費(給与、社会保険料、福利厚生費)が発生します。

アウトソーシングを利用すれば、これらを採用・育成・雇用維持にかかるコストを削減し、変動費化できます。必要な業務量や時期に合わせて柔軟に依頼できるため、費用対効果の最適化を図ることが可能です。

専門知識による業務品質向上とミスの防止

経理業務は税法や会社法などの専門知識を要するため、自社でハイスキルな人材を確保するのは困難です。

アウトソーシング先の業者は、経理・税務のプロフェッショナルであり、常に最新の情報に基づいた正確な処理が期待できます。これにより、ヒューマンエラーによるミスや申告漏れのリスクを大幅に低減できます。

属人化解消と不正リスクの抑制

特定の社員しか経理業務を行えない「属人化」は、その社員の休職・退職時に業務が滞るリスクや、業務内容がブラックボックス化し不正を誘発するリスクを内包します。

アウトソーシングは、外部の第三者が中立的な立場で業務を行うため、業務内容の透明性が確保され、不正の抑制につながります。また、担当者の退職による業務中断リスクもなくなります。

コア業務への集中(経営資源の最適化)

経理などのバックオフィス業務は、企業の利益に直結しにくいノンコア業務です。これらの業務を外部に委託することで、社内の限られた人材を、売上拡大や技術開発といったコア業務に集中させることができます。これは、企業全体の生産性と競争力を高める上で非常に重要な経営戦略です。

法改正(インボイス・電帳法)への迅速な対応

インボイス制度や電子帳簿保存法(電帳法)など、近年、経理・税務関連の法改正が頻繁に行われています。これらの複雑な制度改正に自社で対応し続けるのは大きな負担です。

アウトソーシング業者は法改正の専門知識を常にアップデートしているため、スムーズかつ正確に新しい制度に対応でき、自社の法令遵守(コンプライアンス)体制を維持する上で強力なサポートとなります。

経理アウトソーシングで依頼できる業務範囲

アウトソーシングを検討する際、最も重要な疑問のひとつが「何を、どこまで」任せられるかという点です。経理業務は幅広く、委託できる業務と、法律上または実務上、社内に残しておくべき業務が存在します。

日常業務(ルーティンワーク)

日常的に発生し、マニュアル化しやすい定型業務は、アウトソーシングの対象として最も適しています。これらの業務を委託することで、経理担当者の負担を大幅に軽減できます。

業務

業務内容

記帳業務(仕訳入力)

最も一般的な委託業務。領収書や請求書に基づき、会計ソフトへの入力を行う。

経費精算・領収書処理

従業員からの経費精算申請のチェック、処理、支払手配。

請求書発行・送付

顧客への請求書作成、郵送または電子送付。

売掛金・買掛金管理

入金・支払い期日の管理や消込作業。

給与計算・社会保険関連業務

給与明細の発行、振込データの作成、年末調整(税理士資格を持つ業者との連携が必要な場合あり)。

月次・年次業務(専門知識が必要な業務)

一定の専門性が必要な業務も、BPOや会計事務所系の業者に委託が可能です。

業務

業務内容

月次・年次決算業務

試算表作成、決算整理仕訳の実施、決算書の作成補助。

償却資産税申告業務

固定資産の管理と償却資産税の申告。

財務諸表の作成

貸借対照表、損益計算書などの作成。

法律上外部に委託できない業務(最終決定権は社内)

以下の業務は、最終的な責任が企業自身にあり、外部に丸投げすることはできません。アウトソーシング業者は「支援・補助」にとどまります。

業務

委託できない理由

役割

税務代理・税務相談

税理士法により、税理士資格を持たない者が行うことは禁止されている。

記帳代行、書類作成の補助。税務相談は提携税理士を通じて行う。

最終的な承認・決定

経営に関わる重要な決定(資金移動の最終承認など)は、内部統制上、社内で行う必要がある。

承認に必要なデータの作成と提出。

経営判断の代行

経営方針や予算編成など、企業の意思決定に関わる業務。

経営判断に必要な各種データのタイムリーな提供。

導入前に知っておくべきデメリットと失敗しないための対策

経理業務のアウトソーシングは多くのメリットをもたらしますが、導入方法を誤ると、想定外のリスクや不利益を招くことがあります。ここでは、特に注意すべきデメリットと、それを回避するための具体的な対策を解説します。

  1. 社内にノウハウが蓄積されない
  2. 情報漏洩リスク
  3. タイムリーな経営数字の把握が遅れるリスク
  4. 導入初期にマニュアル作成・引継ぎ工数が発生する

社内にノウハウが蓄積されない

経理業務を完全に外部に委託すると、社内に経理の知識や経験を持つ人材が育たず、業務の仕組みや会計処理の背景に関するノウハウが蓄積されなくなります。将来的に内製化に戻したい場合や、タイムリーな業務相談が必要になった際に問題となる可能性があるでしょう。

【失敗しないための対策】

  • 役割分担の明確化:
    重要な業務や経営判断に関わる部分は社内で行う体制を維持し、アウトソーシング先との定期的な連携会議を設定する。
  • ナレッジ共有の義務化:
    外注先に対し、業務プロセスや特記事項をまとめた報告書やマニュアルの共有を契約に盛り込む。

情報漏洩リスク

経理業務を委託するということは、企業の財務情報や従業員の給与情報など、極めて機密性の高い情報を外部に預けることになります。万が一、委託先で情報漏洩が発生すれば、企業の信用に甚大な被害が生じます。

【失敗しないための対策】

  • 認証・実績の確認:
    委託先がプライバシーマーク(Pマーク)やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得しているかを確認する。
  • 秘密保持契約(NDA)の締結:
    委託時に厳格な秘密保持契約を締結し、万が一の損害賠償に関する事項を盛り込む。
  • 業務場所の特定
    業務が国内で行われるか、またクラウド環境のセキュリティレベルを把握する。

タイムリーな経営数字の把握が遅れるリスク

経営層にとって、経理データは意思決定の基盤となる生命線です。外部に委託することで、社内での処理に比べてデータの受け渡しや確認にタイムラグが発生し、月次決算の早期化が遅れ、経営判断が後手に回るリスクがあります。

【失敗しないための対策】

  • KPI設定と契約:
    契約段階で「月次決算の〇日後報告」といった納期とKPI(重要業績評価指標)を明確に設定し、納期遅延時のペナルティを取り決める。
  • クラウド会計の活用:
    リアルタイムでデータを共有できるクラウド会計システム(SaaS)を導入し、外注先とプラットフォームを統一する。
  • 報告義務の明確化
    定期的な実績報告だけでなく、経営に影響を及ぼす異常値や重要な会計処理について、速やかに報告する義務を設ける。

導入初期にマニュアル作成・引継ぎ工数が発生する

アウトソーシングをスムーズに開始するには、自社の経理業務フロー、使用システム、独自のルールなどを外注先に正確に引き継ぐ必要があります。この初期のマニュアル作成や引継ぎには、社内リソースを割く必要があり、導入前の負担となる可能性があります。

【失敗しないための対策】

  • 引継ぎサポートの確認:
    マニュアル作成や業務設計のサポートを提供している業者を選定し、初期工数を削減する。
  • 段階的な導入:
    全ての業務を一気に委託せず、記帳や経費精算など定型的な業務から段階的に委託を開始し、引継ぎ工数を分散させる。

経理アウトソーシングの費用相場と料金体系

経理業務のアウトソーシング費用は、委託する業務範囲、企業の規模、業者の種類(会計事務所系、BPO専門会社など)によって大きく変動します。ここでは、主要な料金体系と一般的な相場をご紹介します。

料金体系の種類(仕訳数、時間、月額定額など)

主に採用される料金体系は以下の3つです。自社の業務の特性に合わせて、最も透明性の高い体系を選ぶことが重要です。

料金体系

特徴

相場感の目安

仕訳数(取引件数)ベース

記帳代行など、処理量が明確な定型業務によく採用される。

月間の仕訳件数や取引件数に応じて料金が決定する。

時間(従量)ベース

業務範囲が流動的であったり、専門的な相談を含む場合に採用される。

業務を行った時間(マンアワー)に対して料金が課金される。

月額定額(リテイナー)ベース

毎月発生する業務や、継続的な管理・サポートを依頼する場合に採用される。

企業の規模(売上高、従業員数)や、依頼業務のパッケージ内容(記帳+給与計算など)によって月々固定料金が設定される。

業務別・規模別の具体的な費用相場

アウトソーシング費用を検討する際の具体的な目安は以下の通りです。ただし、クラウド会計導入の有無やデータの整備状況によって、実際の見積もりは大きく変動するため、問い合わせ時に必ず確認しましょう。

業務種類

規模の目安

料金相場(月額)

記帳代行

小規模企業・個人事業主
(仕訳件数100件未満)

10,000〜30,000円程度

中小企業
(仕訳件数100件〜300件程度)

30,000〜80,000円程度

経費精算・請求書発行

従業員数30名程度

20,000〜50,000円程度

給与計算

従業員数10名

1,5000円〜30,000円程度

従業員数30名

30,000円〜60,000円程度

月次決算サポート

中小企業
(記帳代行含む)

50,000円〜150,000円程度

初期導入費用

(別途、マニュアル作成やシステム設定費)

50,000円〜300,000円程度
(業務量による)

経理をアウトソーシングする業者選定5つのポイント

経理をアウトソーシングする業者を選ぶ際にチェックすべきポイントは以下の5つです。それぞれ解説します。

  1. 業者の実績・専門性と自社業界への対応力
  2. セキュリティ体制と秘密保持契約(NDA)の締結
  3. 納期管理と緊急時の対応体制
  4. 会計システム・ツールへの対応力
  5. 費用対効果と見積もりの明確さ

業者の実績・専門性と自社業界への対応力

経理業務を委託する業者が、単に事務作業ができるだけでなく、経理・財務に関する十分な専門性を有しているかを確認しましょう。

  • 実績と得意分野:
    過去の導入実績や、特に得意としている業界や業務領域を確認する。自社の業界特有の会計処理に対応できるかどうかが重要。
  • 人員体制:
    業務を丸投げせず、社内で直接担当する人員体制や、資格保有者(公認会計士、税理士など)の関与度を事前に確認する。

セキュリティ体制と秘密保持契約(NDA)の締結

前述の通り、経理情報には機密性が高いものが含まれます。情報漏洩リスクを避けるため、セキュリティ対策が最優先事項となります。

  • 第三者認証の有無:
    ISMS認証やプライバシーマーク(Pマーク)など、第三者機関の認証を取得しているか確認する。
  • 秘密保持契約(NDA)の徹底:
    損害賠償責任の範囲や、情報管理方法の詳細を含む、厳格な秘密保持契約を必ず締結する。
  • データ管理場所
    業務で使用するデータの保管場所(国内クラウドサーバーか、国外かなど)を確認する。

納期管理と緊急時の対応体制

経理業務には、月次締めや支払日など、遵守すべき期日が多数あります。納期遅延は、取引先や金融機関との信用問題に直結するため、業者に高い納期管理能力が求められます。

  • KPI設定:
    月次レポートの提出期限など、主要な業務について具体的なKPI(納期)を契約書に明記する。
  • 連絡体制:
    担当者が不在の場合やシステムトラブルなど、緊急時に速やかに連絡・対応できる体制が整っているか確認する。

会計システム・ツールへの対応力

現代の経理業務では、クラウド会計(freee、マネーフォワードなど)の利用が不可欠です。委託先のシステム対応力が低いと、データ連携が滞り、かえって業務効率が低下します。

  • 利用システムへの習熟度:
    自社が利用、または導入を検討している会計ソフトや経費精算システムに、業者が習熟しているかを確認する。
  • デジタル化の提案力:
    単に作業を代行するだけでなく、ペーパーレス化やRPA導入など、業務のデジタル化・効率化について具体的な提案ができるかを見極める。

費用対効果と見積もりの明確さ

提示された料金が適正であるか、その費用でどこまでのサービスを受けられるのかを明確に理解する必要があります。

  • 見積もりの内訳:
    「基本料金」「仕訳単価」「オプション料金」など、見積もりの項目が明確に分けられているか確認する。曖昧な「一式」表記は避けるべき。
  • コストシミュレーション:
    初期費用とランニングコストを総合的にシミュレーションし、自社で内製した場合と比較して、費用対効果(コスト削減だけでなく、業務品質向上やコア業務集中による間接的な効果も含む)があるかを検討する。

まとめ

経理業務のアウトソーシングについて、そのメリット・デメリットから、依頼できる業務範囲、具体的な費用相場、そして失敗しないための業者選定のポイントまでを詳細に解説しました。経理アウトソーシングは、単に業務を外部に委託するだけでなく、企業の生産性を高め、経営資源をコア業務に集中させるための戦略的な経営判断です。

アウトソーシングを成功に導き、導入後の後悔を避けるために、特に重要となるポイントを再度確認しましょう。

成功のカギ

具体的な行動・注意点

目的と範囲の明確化

費用削減、属人化解消、法改正対応など、導入目的を最優先で設定し、委託業務と社内業務の線引きを明確にする。

リスクへの事前対策

情報漏洩対策に加え、経営数字のタイムリーな把握遅延リスクに対し、契約段階で報告体制と納期(KPI)を明記する。

業者選定の徹底

自社の業界知識、クラウド会計へのシステム対応力、セキュリティ体制の有無を必ず確認する。

経理業務は、企業の成長を支える基盤です。膨大な業務や専門知識の不足に悩んでいる場合は、無理に自社だけで抱え込まず、アウトソーシングという選択肢を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。外部の専門家の力を上手に活用することで、貴社の経理部門はより強固で効率的な体制へと生まれ変わるでしょう。

BizFocus 編集部
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