給与計算の代行・アウトソーシングとは?メリットや注意点を詳しく説明
社員の毎月の報酬額を算出する「給与計算」業務は、勤怠情報の集計から社会保険や所得税といった控除項目の計算に至るまで、複雑で専門的な知識が必要です。
自社で給与計算を行っている場合、多くの人的・時間的負担による、通常業務へのしわ寄せにお困りの方も多いのではないでしょうか。
しかし、その問題はアウトソーシング(外部委託)を行うことで解決できるかもしれません。
本記事では、給与計算のアウトソーシングを行う「給与計算代行」について、内容とメリット・注意点を簡潔に解説します。
目次
給与計算のアウトソーシングで依頼できる業務内容
給与計算は多くの工程を必要とするため、その段階ごとに必要な部分だけ、または一括して業務委託できます。また、毎月の社員の給与計算だけでなく、年末調整や住民税の更新など、繁忙期の作業だけをスポット的に依頼することも可能です。
給与計算から振込・納税までカバー
一口に給与計算といっても、その工程は多岐にわたり、基本的なものだけでも以下のような作業で構成されています。
・勤怠状況の集計
・基本給・手当の計算
・交通費の計算
・各保険料の計算
・各税金の計算
手当類には、残業手当や休日・深夜勤務手当など毎月金額が変動するものもあり、控除項目となる保険料や税金なども頻繁にルールが改正されるため、作業には煩雑で専門的な知識が要求されます。
社員の多い企業などではこれらを膨大な数行わなくてはなりませんが、給与の正確な支給は会社と社員の信用関係に直接影響するため、ミスは許されない厳しい業務でもあります。
しかし、給与計算代行業者では、これらの業務をすべて請け負うことができるため、担当者の負担を劇的に軽減できます。また、給与計算だけではなく、給与の振込や保険料・税金の納入まで行ってくれる業者も存在します。
年末調整や住民税更新といった時期的な業務も依頼可能
給与計算業務は、年末調整や住民税更新など、一時的に著しく業務量が増加する時期があります。毎月の給与計算は問題なくこなすことができる企業でも、これらの時期に人手が足りなくなることは多いものです。
このような繁忙期にだけアウトソーシングを利用する、という使い方も可能です。
給与計算のアウトソーシングがもつメリット
給与計算代行業者を利用することで受けられるメリットとしては、業務量の軽減だけではなく、作業の正確性を上げる、コストの削減、コア業務への注力が可能になる点が挙げられます。場合によっては、社外の知識を持つ人間に依頼することで、自社体制を見直すきっかけを得られることもあります。
法令改正をカバーした上での正確な計算
保険料の改正や税制など、毎年のように変更される法令類を、都度正確に把握し、業務に反映させることは大変困難なものです。自社内でそれらを常にキャッチアップできる体制を整えるには専門の担当者を立てる必要があるほどです。
給与計算代行業者は、法令改正の知識に精通しているため、正確な計算を安心して任せることができます。
人件費や計算システム導入などのコストを削減できる
給与計算業務を自社内でまかなおうとすると、専門の担当者を継続的に雇用し、育成するだけでなく、給与計算システムの導入などが必要になります。また、年末調整などの繁忙期を見越して多めに人員を確保することは現実的ではありませんし、保険料・税制などの法令が改正されるごとにシステムの更新を行っていると、コストがかさむことになります。
しかし、アウトソーシングを活用すれば、必要な業務や必要な時期だけにスポット的に労働力を補填することができるうえ、自社での人員確保や教育、システムを用意をする必要がないため、結果的にコストの削減につながるのです。
社内リソースを無駄なくコア事業に充てることができる
給与計算をアウトソーシングで依頼することで、社内の人的リソースを企業の発展、収益増加に直結する「コア業務」に充当できます。
専門部署がない会社では、総務や経理担当が給与計算業務を兼務していることが一般的ですが、専門的な知識のない担当者が給与計算を行う場合、適宜確認をしながら作業にあたるため、必要以上に時間をとられてしまい、メインの業務に十分な社内リソースを割くことができない恐れがあります。
残業を含めた勤怠管理のアドバイスを受けられる
給与計算のアウトソーシングを行っている業者は多くの会社と取引をしており、他社の勤怠管理状況・財務状況を把握しています。直接的に他社の情報を聞くことは情報保護の観点からできませんが、他社と比べて自社の状況がどのようであるか、外からの目をもって的確なアドバイスを受けられることもあります。
自社の体制に非効率的な部分があった場合、それを是正するための有用な情報が得られるのは、企業運営を長期的に見たときに大きなメリットとなるでしょう。
給与計算をアウトソーシングする上での注意点
アウトソーシングを活用する場合には、注意する点がいくつかあります。
まず、給与計算をするためには、社員の勤怠情報や社内で制定した給与に関するルールなどの社内情報を委託先に提供するため、情報の取りまとめを行う必要がありますし、情報漏えいのリスクにも注意しなくてはなりません。
また、社員の少ない企業など、アウトソーシングをすることで余計にコストがかかってしまうケースもあります。
給与計算に関する全ての業務を依頼できるわけではない
給与計算代行業者に委託できる業務は、あくまでも給与の計算とそれに付随する雑務のみであるため、それらの大元となる勤怠情報や入退社・昇進などによる従業員情報の更新は自社で行わなくてはなりません。これらの情報の伝達ミスによる給与計算の誤りは、委託先では手の打ちようがないため、細心の注意を払う必要があります。
社外への情報流出のリスクがある
社内情報が外部に流出するリスクがゼロではないことも理解しておかなくてはなりません。
雇用している社員の個人情報や給与に関しての社内ルールは、社内情報としても特に重要な部類のものです。給与計算を委託する場合、それらの情報を開示する必要があるため、委託先の情報管理体制や情報流出リスクに対する備えなどを事前に確認しておく必要があります。
ノウハウの蓄積が遅くなる
給与計算をするには、専門的な知識と作業を効率化するためのコツやノウハウが必要ですが、アウトソーシングをすることで自社内でのそれらの蓄積が遅くなります。
適宜アドバイスなどを受けられることもあるため、全く期待ができないというわけではありませんが、いずれ内製化することを見越している場合、アウトソーシングがマイナスに作用する可能性もあります。
また、自社で給与計算を行なっていれば、社員からの自身の給与や法令改正に関する質問などがあった場合にすぐ返答することが可能ですが、アウトソーシングをしているとその質問を一度委託先に渡す必要があるため、レスポンスが遅くなってしまうという問題もあります。
社内体制が安定しており、従業員数が少ないと恩恵を受けにくい
給与計算の代行は「入退社・昇進」「給与に関する社内ルール」「従業員数」が多いなど、作業が煩雑になりがちな企業に、最も効果的です。
そのため、従業員が少なく、シンプルな構造の企業の場合、多少コストをかけたとしても自社内で給与計算を行ったほうが最終的に安上がりになる可能性があります。現在自社で給与計算を行っている場合は改めてそのコストを計算し、アウトソーシングした際の費用と十分に比較しましょう。
まとめ
給与計算をアウトソーシングすることで、企業は以下のようなメリットを享受できます。
・法令改正に惑わされない正確な計算
・時間的・費用的コストの削減
・コア業務に充当する社内リソースの確保
・社内体制見直しのアドバイス
しかし、給与計算代行には社内情報を外部に開示し、その業務のほとんどを任せることになるため、情報流出のリスクがあったり、給与計算について社内で把握している情報が乏しくなるなどの注意点もあります。
また、もともと給与計算に対してシンプルな構造を持つ企業や従業員数が少ない企業など、アウトソーシング自体が向かないケースもありえます。給与計算のアウトソーシングを検討する際には、自社の特徴や内製化した場合の費用を把握した上で、吟味することが重要です。